消えた扉


いつからだろな?
忘れちゃったんだ
夢の世界の入り口を
古ぼけた
取っ手を掴めば
今にも バタンッ!って
外れてきそうな
おんぼろのドァーなんだけど
言葉なんて知らなくたって
一歩足を踏み入れれば
其処は 私の大好きな
一面の 黄色いお花畑
目を瞑れば
甘ぁい蜜の匂い
青い空に 柔らかな太陽
ミツバチたちの羽音が起こす
かすかな風を頬に感じながら
ちょこんと座り込み
白い画用紙に
まっさらなクレヨンで
お絵かきをしている
描かれた虹の先
私の大好きな人たちがいる



虫歯が痛くて
おお泣きしていた私に
「ここに座りなさい」
神様にお願いしてくれた
呉服屋の行商のおじさん
不思議と痛みは無くなり
暗示に掛かった私は
けろりとした顔で
外に遊びに行ったっけ



そうそう!
姉弟を迎えに来た叔父さんの
馬車に乗りたくて
山のおうちにお泊りに行った
まだちっちゃな私は
夕暮れと共に寂しくなって
帰りたいと泣きじゃくる
そんな私を 暗い山道を
馬車で送ってくれたっけ



古ぼけたドァーをくぐれば
いつだって行けたのに
時空を超えた 夢の空間
コチンッ!と固まったままで
踏み出せない一歩
戻っておいで!
私の・・・私の柔らかハート