浮遊したこころ (貴方との出会い)

何度も 離れようと試みた。
別れの 手紙(詩)を渡すたび 其の子は哀しいと泣き叫んだ。
幼いままの純粋なこころは 私に母の面影を見ていたのだろうか
それとも 嘗て 死ぬほど愛したと言う年上の女性を重ねていたのだろうか
いつの間にか 私は 其のどちらも受け入れてしまった。
きっと これが情を移す そう言うことなのかも知れない。
私と知り合った時には 彼には 既に恋人がいた。
と言っても私自身は 始めは彼の思いに全く気付いていなかった
とある一つの切っ掛けから 急に私の身辺が騒がしくなった。
私の目の前に現れた彼 過去を辿ると それまでの経緯の端々に
私と言う影が描かれているような気がした。
それまで 私には家庭があり過去の様々な足跡も描いてきていたから勿論彼も知らないはずがない。
ただ 嫌いではなかった。
と言うよりも むしろ純粋で何処までもあからさまに慕ってくる彼を愛おしいと思った。
ただ 私は彼を騙した様な形になることだけは嫌だった。 
私は 其の世界では年齢は明かしていなかったから 彼とは
とてもつりあう年ではないことを告げたくて彼の気持ちに気付いて間もなく 年齢と夫とのツーショットの 写真を彼に送った。
その後 それまでとは 全く違い 落胆の想いが描かれていた。
それでも私は それでよかったと思った。
きっとこれで 全ての気持ちの切り替えができるのだと思った。
実際の彼は 決して私を 受け入れはしなかった。
描かれている思いは 全て過去の恋愛と 現在の恋人への感情であるときっぱりと言い通した。
ただ 描かれる詩や ブログの世界では 明らかに 私と繋がっていると感じられた。
私は サイトを離れる事にした それ以上お互いの感情が深まる事を 避けたかったから・・・それでも個人的には 友人としてメールの繋がりを 辞める事はしなかった
(この時既に 私のこころは 離れてしまう事を 拒んでいたのかも知れない)
私が ブログを立ち上げる切っ掛けになったのも 彼の賛成してくれる気持ちによるものでも在った。
其の当時 親しくしてくれていた 何名かの方達の お力添えもあり私は サイト退会後 今のブログである『X』を立ち上げた。
なんとなく 一人になってしまった寂しさもあり
サイトの人達の事や 自分で始めた写真の脇に 短い詩などを添えながら ブログを綴っていった。
其の頃の私には もう既に情が入り込んでいたのかもしれない。
サイトの中に描かれる 彼の寂しさを感じながら いつの間にか私も 彼の思いに答えるように詩の世界にのめり込んで行った。
と ある日突然私のブログに彼からのコメントが記されていた。
普段 メールなども 一方的に私が打つだけで 彼から メッセージが送られてきたのは 初めての事だった。
内心私は 嬉しくて涙が溢れた。
そして 明らかに彼は 私の書くブログに 目を通してくれている様に感じられた。
それからまたゆっくりとメールや ブログへのコメントなど 此方から送ったものには返信をくれるようになり 私は またサイトに登録する形になった。
私は 友人としてでも好い 他に目立たぬように ひっそりと 彼の気持ちを拾っているだけでよかったのだが 彼は なぜか 詩の中だけは 大胆とも言えるほど真っ直ぐだった。
私は 夫がいながら どこか後ろめたい気持ちも否めなかったが
これは 全く架空の世界 物語や絵本の中の出来事 そんなふうに自分のこころを誤魔化し 時には 大喧嘩もしながらも 細々とメールの交換なども続けていた。 ただ現実の世界では 友人である以外の何者でもなかったから 彼は恋人と 私は夫と 今までと何も変わらぬ生活と続けてきたし それで満足だった。
何時しか 変わってしまったのは 彼の家族に大きな変化が在った事だ。家族の事故など不幸続きの中で 彼自身のこころがひどく打ちのめされていた。
私は こころが痛かった。  友人とは言っても飽くまでも詩と云う媒体を通してのもので 慰めの言葉も 詩として送るしかなかった。
そんな中何時も傍で見守ってくれる恋人の存在が彼の中で大きくなって行くのを感じていた。
確かに 何処か寂しいものも無いとは言えなかったが 初めから現実的に彼との何ものもありえないと思っていたから 私は素直に 友人としての気持ちを貫こうと思った
しかし 彼の詩やブログの中では 相変わらずの作風が貫かれている。  全て私の妄想と思いながらも 彼には 現実の世界を大切にしてほしいと願った。 別れの意を示す 詩を書き続けた 其のたびに 彼の詩の世界に 落胆の姿が映し出された。
きっと輪廻というものが在るのだとしたら 繰り返す道程の途中
私と彼は もしかしたら 幼い頃に無理やり引き裂かれた母子だったのかも知れないと 或いは 神様が時代を間違えて産み落とした 悲恋の恋人同士だったのだろうか?
愛と言うよりも 情の方が先走りして 見えない洞窟の中に迷い込んだような・・・。
彼が恋人と歩み始めた時 私のこころはどちらかと言うと 母の気持ちに近かったのかも知れない。 何処か母を慕う子 子を手放す母 そんな感情が渦巻き いつの間にか血肉を引きちぎられるな苦しさの中に追い込まれてしまった。 獅子は子離れをする時に崖から落とすと言われているが 結局は情に流されて 自分も一緒に落ちてしまった。 弱い不完全な私のこころが そうさせてしまったのだと思う。
例えばこれが ネットと言う 或いは詩の世界と言う夢幻で在ったとしても 感情の神経が繋がってしまうものなのかも知れない。 そんな気持ちを 私はまだ 整理できないでいる。